~天へ送る風~
その間にアレキサンドラは荷物の中から生のままの卵を取り出し、大蛇の前に差し出した。
だが、蛇は困ったように首を傾ける。
「失礼。お姿は蛇でも中身は宰相殿でしたね。リンゴはいかがですか? リンクの果樹園で収穫されたもので、蜜が入ってるんですよ」
そう言って、一ぺんに五、六個差し出し、彼女は跪いた。
まるで、先ほどの非礼をわびるかのように、慎重に距離をとり片膝をつき眉間に皺を寄せ、神妙にしている。
白蛇はそれを知ったかのように、深紅の口を大開きにし、リンゴらの次に荷物持ちの軍馬二頭をことごとく丸飲みにした。
かろうじて荷は残ったが、まさに怪物。
王子はもちろん、アレキサンドラも震撼した。
そして、完全に洞穴から出てくると、大蛇は巨大なとぐろを巻いた。
背中に透き通った透明の羽根のようなものが生えているかのように見えるのは気のせいだろうか。