~天へ送る風~
いや、これが真実宰相マグヌスなのだろうか? 二人とも鳥肌が立って震えが止まらなかった。
「娘よ、娘よ。よくぞこのマグヌスめを哀れんでくれた。願いはなんであろうか」
殷々(いんいん)とした大蛇の言葉に、アレキサンドラは小さく首をひねった。
人語を解すのであれば、ますますマグヌス宰相に近づいた気がする!
「わたくし個人の願いが、今聞き届けられるなら、宰相殿、城にお戻りになって城下の者たちの不審と不安を解いていただきたい」
「はて、城……とな」
剣も抜けず一人、手持ちぶさたで聞いていた王子が側へ来て、勢い込んで事情を話した。
「城にはもう一人のマグヌスが、とにかく、取り締まれ、罰を与えよのいってんばりなのだ。私一人ではどうにもならない。マグヌス宰相、どうか戻ってくれ」