~天へ送る風~
「私は……実は人間だったことがあるらしきことは覚えておるのだが、時が経つごとに記憶が薄れて、浅ましい獣になってゆくようなのだ」
大蛇は言ったが負けずに王子も嘆いた。
「この冬は厳しいな。城下の者達はどうしているか。ああ……マグヌス抜きにして火も焚けない彼らだというのに」
白蛇は語った。
もう、何故大蛇などに身を変えたものか、それすらもう思い出せず、泉から獣を退ける日々だという。
「なぜ泉はこのように毒々しくなってしまったのだ? 聞けば以前は薬効を求めて採取されていたと聞くのに。昔からそうだったか?」
「その質問にはお答え致しましょう。呪(まじな)いのかかったその長剣が泉に封印の力を及ぼしているのです」