~天へ送る風~
アレキサンドラが王城に召されたとき、とっくに王のお姿はなかった。
「今日からはこの剣を抱いて寝るか……」
「ああ……貞操ばっちりなのだね」
「いえ、単なる趣味です。あなたに貞操云々と言われたくはありません。変な気持ちだ」
ざわめく潮騒が彼女の耳を覆い、それは心を騒がせるばかりだったのだけれど、皮肉にも、なんの苦もなく長剣は抜けた。
泉は泡立ち、溢れたかと思うと清らかな姿を取り戻し、僅かな陽光に厳かに、輝いた。
「呪いが、剣が……君、乙女だったんだなリック」
「黙って」
頭を垂れている大蛇の尾を彼女は一刀のもとに切って捨てた。