仮面の下に捕らわれて
「時間切れか」

唇を放して不服そうに呟いた廣太郎は私の手を引き進んでいく。

「さっきから何回もキスして何のつもりよ!」

屈辱のファーストキスからもうコウさんとしかキスしたくないって思ってたのに…!

「百香が『柏原会長』とか『あんた』って言うからだろう?」

「だからって酷い!私の気持ち無視して…」

「条件は条件だろう?なんならさっきまでので賭けを終わらせることもできるが…」

「…っ」

確かにそうだ。
終わらされるくらいなら今を耐えてこれからさせない方がよっぽどマシ。

「流石に飲み込みが早い」

「廣太郎や父親に人生のレール引かれるなんてまっぴらよ」

「強気だな。好きな男が手に入る見込みでもあるのか?」

「無いわよ。ただ私がどれだけやれるか、それだけ。馬鹿にしないで」

「いつまで言っていられるかな?そのうち俺無しで居られなくしてやる」

会話はそこで途切れた。
目の前にはメイド姿の女性。
私は廣太郎の指示を受けたその人に連れて行かれてしまったから。
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