仮面の下に捕らわれて
とある一室に通された私は今鏡台の前に座らされている。
どうやって用意したのか分からない身にぴったりの少し大人びた膝丈のドレスを着せられて、髪を結い上げられていく。

「廣太郎様からの伝言をお伝えしますね」

「え…あ、はい」

美しくコーディネートされていく自分をぼんやりと見ていたので返事が送れてしまった。
そんな私に微笑みかけた女性は母と同年代位だろうか。
物腰の柔らかそうな人。

「今日は廣太郎様のお祖父様にこれからお会いする事になっております。百香様も同席下さいますように、と」

「え?」

「ご婚約は廣太郎様がご自身の判断で動かれましたし、宇奈月課長の件も有りますので」

「そう…ですか」

どんな理由であれ、廣太郎には結果助けられたのだと思い知らされる。
高校生ながらに会社の仕事にも関わっているのかと思うとなんだか聞いていて目眩がしそうだ。
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