仮面の下に捕らわれて
「廣太郎様をお嫌いにならないで下さいね」

「あ、あの…正直なところ…好きになるのは難しいです…」

狼狽えながらも嘘は言えない。
私には好きな人が居るし、こんな横暴に振る舞われて好きになるのは無理だろう。

「突然現れて家庭を守るために婚約させられて…大体次期社長と一般庶民の私じゃやっていかれないです」

「そんなことないですよ。坊ちゃんと百香様ならお似合いでいらっしゃいます!この間だって坊ちゃんったら…」

「こら静佳、余計なことは言うな。あと、いい加減『坊ちゃん』もやめてくれ」

「ちょっと!ノックも無しに入って来ないでよ!」

丁度メイクまで終わったとこだけど…
静佳さんって言うんだ、この人。
一体何を言おうとしたんだろう…

「婚約した時点で俺のもんだろ。途中だろうが裸だろうが関係ない」

「誰があんたのもんよ!…あっ」

廣太郎の唇が近づいて一瞬触れ、離れた。

「好きなだけ怒ればいい。キスの回数も増えるしな」

「なっ…!」

「今は時間がない。行くぞ」

「きゃっ!」

強引に立たされ、手を引かれる。
もう!何なのよ!
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