仮面の下に捕らわれて
「授業中にすまんな」

「いえ、ご多忙な中お時間をありがとうございます」

廣太郎が深々とお辞儀をするので、私も頭を下げた。

「で、そちらが宇奈月の…ほぅ、美しいな。廣太郎などやめて儂にせんか?」

「…!」

「お祖父様お戯れを」

「流石に犯罪じゃな。まぁ冗談は置いておくとして…」

柏原学園長は足の先から頭のてっぺんまで値踏みをする鋭い視線で私を見た。

「なかなか聡明そうじゃな。身体も立ち姿も申し分ない。成績も…ほぅ、廣太郎の次席か」

なにやら紙切れを老眼鏡越しに見ている。
すごく居心地が悪いが、就職面接の予行だとでも思うことにしようと決めた。

「しかし、何故あの男を庇った?まさか女の為などと笑わせる理由ではないだろうな」

「庇っているわけではありません。金は取り返す手筈が整いました。娘は担保。あの男不正の遣り口が目を見張る物がありました。ここで切り捨てるより、上手く活用すべきかと」

私はただ聞くのみ。
口出しは無用と指示されていた。
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