もう僕は君のもとへ帰ったりはしない
シャッ、と音をたててカーテンがあいた。
看護師とは思えないほどに美人な女性が、胸元にクリップボードを抱えてそこに立っていた。
そしてあたしに近づいて来たと思うと、顔を覗き込んであたしの体調を伺い、
「目を覚まして、本当によかったわ…。
小野寺さん、3日も眠っていたのよ。まったく、リストカットなんて何を考えてるの」
…呆れた声色。
当たり前だと、自分でもわかっている。
しかも今回が初めてじゃないことくらい、あたしの体を見れば誰だってわかる。
腕だけじゃない。体中に、自分が刻んだ無数の傷。
「これからは、もうこんなことしないように」
看護師はそう少しため息をついて、カーテンをひいてから部屋を出て行った。
梓はあたしの手を握ったままだった。