エージェント
だからこそ、まだ組の中でも若いわたし達にも気さくに話しかけてくれるから、
「俺は銀坊が若頭ってのが不安だけどな」
「いっぺん、締めたろか」
立場は上なはずの銀にさえ、冗談を言えるのだ。
「まあ、それはさておき。コウキ、いやお嬢」
「うん」
「東はマジで何があるかわかんねぇ。気ぃつけとけよ」
「わかってる」
わたしが向かうのは、未知の領域なんだ。
妹尾は組長に話があるといって、母屋の方に帰っていった。
「ねぇ、銀」
「なんや」
「きっと妹尾はこうなるってわかってたのかもね」
「……そんなん、ミツが九州に行った時から俺だってわかってたわ」
わたしが九州で過ごしたのには、わたしを、赤羽光希という人間を隠すため。