エージェント
Ⅹ 終わりの音
『馬鹿野郎っ!!お前は動くなって言ったやろ!!』
「……うるさい」
『どうせセーヤを脅したんやろ!!わかりきっとるわ!!』
「……うるせぇな」
『何するつもりや!!』
「なんもせえへんから、黙っとき!!」
『っ……お、おう』
相変わらずわたしのこととなると、若頭としてのメンツまる崩れな兄。
「銀、本当に何もするつもりもない。ただ“阿部コウキ”が東に現れるだけ。東にいると思わせるだけ」
『それでもリスクはあるだろ。足は?』
「行きは新幹線。帰りはセーヤに頼んで西のギリギリのとこで待っててもらう」
『しっかし、東京から西の端まで、どんだけあると思ってるん』
「なんとかするさ」
変装道具は持っていくから、タクシーに乗っても変装を解かなければなんとかなるはずだ。