エージェント
『…言うてももう聞かんのやろ』
「うん」
『今お前が動くんは、組か、私用か』
「私用で」
『後で組長に怒られろ』
「その覚悟」
『ーーこれが、最後やからな』
「うん。わかってる」
『お前、今どこいる』
「東」
『はぁああ!?事後報告すぎるぞ!!』
流石にこれ以上大きな声出されると困るので、プツリと電話を切る。
思い立ったら即行動。
それに行動を起こすには早い方がいい。
できるだけ早く、ガキどもの動きを止めなければ。
「ふぅ…」
この街と離れてから1ヶ月半。
時刻は夜の9時。
人目につかないトイレで“阿部コウキ”の姿に変装し、荷物を痕跡の残りにくいロッカーに預ける。
この街で数ヶ月過ごしたおかげで、だいたいの痕跡のつき方はわかった。