エージェント
ーー時刻はほんの数時間前に戻る。
セーヤのバイクで東へ入り、銀達が向かっている本城の本邸とはまた別の場所にたどり着いた。
「光希さん、ここっすか…?」
「ああ」
「本当にいるんすか、本城麗子」
「いるさ。ほら見てみろ」
わたしが指差した場所にあるのは、本城組使用の黒い車。
何度も乗ったことがあるからみた瞬間にわかる。
「わかってると思うけど、わたしの目的は東西の抗争ではない」
「何べんも言わんと知ってます。ただの私情」
「そう」
わたしが動くのは、あくまでも私情。
それがたまたま本城と関わりがあっただけ。
「護衛は少ないっすね」
「こんな所で護衛多い方がおかしいだろ」
わたしとセーヤがいるのは、東で有名な温泉街の高級旅館。
こんな所に組の女が避難してるなんて、誰が想像するだろうか。