エージェント
「……わかった。今回だけは見逃そう。彼女を離してくれ」
本城 源としては、こんな小娘一人に、と思っているだろう。
彼の唯一の失敗は、わたしが“阿部コウキ”としてきた時に、"赤羽光希"を見抜けなかったことだ。
朔羅はわたしが何かを隠しているって、すぐ見抜いていたみたいだけどな。
妹尾は拘束を解かれ、赤羽の組員に支えられる。
しっかり歩けているみたいだし、無事でよかった…。
「ミツ、いいだろ」
妹尾が拘束を解かれ、この場から撤退しようと動き出した赤羽組員を尻目に、わたしは本城麗子を捕まえたまま、動かなかった。
「赤羽と本城の事は解決でいい。でもわたしの復讐は終わってない」
わたしの、本城麗子への憎しみは、こんな事で解決できるようなものではない。