エージェント
「ど真ん中が崩れよった。いずれ東との抗争が起きるやろう。お前ら覚悟しとけ」
実家ーー西の極道一門をまとめる赤羽組の本邸に戻ったら、組長が開口一番に言った。
わたしがこの家に生まれて20年。
たぶん一番騒ついているだろう。
「お頭、それはほんまっですか?」
「我々はどないしましょう」
「今すぐ行きやすか?」
組の幹部達が組長に問い詰める。
それでもなお、腕を組み動じないのはこの組の絶対権力者。
「おい、オメエら、あとは各自に連絡いれらぁ、今日は解散だ」
その権力者の一番の側近、宮前は周りを静める。
要は今日は注意喚起だけって事なのだろう。
それを理解したのか、一同はゾロゾロと部屋を後にする。
わたしはそれを横目に、ただずっと座っていた。