エージェント
西は東を知らない、何も情報がない。
だから今までもどうしようもなかった。
でも違う角度で潜入することにした。
その役目をするのに、わたしはうってつけだった。
ただそれだけのこと。
組長はわたしを娘として見ていない。
わたしは組長にとって使える駒なんだ。
それはこの一年、関西に戻ってきてから十分感じ取れていた。
「銀坊もコウキも、相変わらず仲良いな」
気配は感じていた。
懐かしい気配を。
「来てたのか、妹尾」
「流石に俺だけ遠すぎてすぐ来れなかった。悪りぃな」
部屋の入り口の壁に寄りかかるワイルドな男。
若そうに見えて実は40を超えてる妹尾と呼ばれるこの男は、
「一年ぶりだな、コウキ」
わたしの父親だった人。