幕末異聞
楓の手が途中で止まる。
風呂敷の折り目の隙間からは白と黒が見えた。
「まだ作っていないだろう?大きさは後で自分で調節するといい!」
風呂敷に包まれていたのは、隊服だった。
それも、局長と副長のみが羽織ることを許された白地に黒のダンダラ模様を袖に染めてあるものだ。更に、鉢金と四つに折られた赤い布が包まれていた。
楓は赤い布を手に取り、広げてみる。
広げた布の形は長方形で、かなり大きい。
布の上下には隊服と同じ白のダンダラ模様が染め抜いてあり、真ん中には大きな白の文字で文字。
『誠』と書いてあった。
「これ…局長の隊服一式じゃないですか。こんなもんもらえませんて」
「ふははは!そちが遠慮を知っているとは驚きだ!!しかしここは遠慮する場面ではない。
ありがたく受け取るのが礼儀だ!」
「遠慮くらい知ってますよっ!いや、だってこれ局長がこれから着るんやろ?」
「そんなことどうでもいい!わしはお前に受け取れと命令しているんだ。
目上の者に恥をかかせる気か?」
普段見ることのない芹沢の内心の焦りが微かに見えた気がした。
その芹沢の不可思議な態度に楓の第六感が反応する。