幕末異聞


「な……何者だ!!?」



バっと起き上がり大声で叫ぶ。
その声に他の三人も目を覚ました。
どうやら四人のうち二人は女のようで、甲高い叫び声が聞こえる。
女たちが部屋から逃げようと襖に向かって走り出した瞬間、原田の後ろで待ち構えていた山南が二人の女を斬り捨てた。山南の足元にはすぐに血溜まりができ、女が倒れこむ。


「逃げようとすれば容赦は致さん」


女の返り血を受けた山南は冷たい声で残りの二人に忠告する。


「くっ……!!お前ぇぇ…山南か!!!」


「あんた、平山だな?」



「お前は!!!原田っ!!」


平山は歯を食いしばり、近くに転がっていた刀を手に取った。

「おのれーーーっ!!!近藤の犬がっ!!調子に乗りおってーー!!」

怒りと恐怖に狂った平山は刀を鞘から抜き、がむしゃらに原田目掛け刀を振り下ろす。


「では、私の相手はあなたですね。平間さん」

山南は残る一人の男と対峙する。



「山南……貴様ぁぁっ…!!」


唸るような声を出す平間。
鞘から抜いた刀を震える手で中段に構える。


「観念なさい。貴方は局中法度に反する行為をした。今なら切腹という事も…」


――ガキイィィィィン…



山南が説得し終わる前に平間は切っ先を山南に向けていた。

「くっ!!」

刀同士が擦れる独特の耳障りな金属音と真っ暗な部屋を蛍が飛んでいるかのような火花が散る。興奮している平間の力は、並みの人間のものではなかった。山南は今の平間と力勝負をしても勝ち目が無いと判断し、咄嗟に剣を払い、後ろに飛び退く。


「局中法度なんて所詮お前らに都合いいように作られたものだろうっ!!そうやって邪魔なやつは消して行くのかぁ!!!?
貴様はただの人殺しだぁぁぁ!!!」


平間の気迫に山南は体中に悪寒を感じた。

< 140 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop