幕末異聞
「ここから行く」
「芹沢さんの部屋ですか。ここに居てもらわなきゃ困りますね」
庭に面した縁側の廊下を歩く土方と沖田。
一番端の部屋で止まる。
「総司、いいか?」
「いいですとも!」
こんな場面でも微塵も緊張しない沖田に冷たい視線をやる土方。
「一発で仕留めるぞ」
「出来れば」
二人は抜き身の刀を利き手に持つ。
土方が障子を少し開く。
その隙間から目だけを覗かせ、中の様子を確認する。
「中には……二人いるようだ」
「……二人?」
土方の報告を聞いた沖田の頭には、最悪の状況が思い描かれていた。