幕末異聞
「ちょっとお絹ちゃん、一体どうしたっていうのさ?!」
「へっ?!!」
「さっきから面白いことも無いのにニヤニヤしちゃってさ」
「え?!私笑ってた?!!」
「「はい。そりゃもう不気味なくらい!」」
四条堀川にある茶屋『佐久間』で三人の若い娘が談話をしている。
嵐山の方角に太陽が傾きかけてきた頃、お茶屋の客はすでに居なくなっており、三人は店じまいの準備に取り掛かっていた。
「何かいいことあった?」
笑顔でお絹に尋ねる娘。
「いいこと…って程では…」
お絹の顔が一気に赤く染まる。
「あ!美代ちゃんこの子顔赤くなってる!やっぱりなんかあったんだ!!」
もう一人の娘がお絹の顔を覗き込み、美代に報告した。
「ちょっ…!!お滝ちゃんよしてよ!恥ずかしいじゃない!!」
慌ててお滝の肩を軽く押すお絹。
「お絹、話してみなよ!」
美代が自分より小柄なお絹の頭を優しく撫でる。
「美代ちゃん。うん。実は、今朝の事なんだけど…」
お絹はゆっくりと今日の出来事を整理しながら、話し始めた。
「「ええーー!!!?」」
お絹が話し終わった途端、二人は声を揃えて驚嘆する。
「そ、それは無いよ」
「うん。だって怪しすぎるもん」
美代とお滝はそれぞれ正直な感想を述べた。