幕末異聞

「じゃあ、私たち帰ります。色々失礼な事言ってごめんなさい」


「別にええよ。じゃあ、また今度な」

「はい!お団子用意して待ってます!」



女性らしい華やかな笑顔を残して彼女たちは楓の前から去っていった。



「賑やかな方たちでしたね!」

「ホンマ胸糞悪い笑顔やなッ!あんた楽しんでたやろ?!」

「それはもう大満足ですよ」

何の悪びれた様子も無い沖田の姿に楓は手加減なしの蹴りを入れたが、意図も簡単にかわされてしまった。

「当たったら危ないじゃないですか!」

「当たる気ないくせに言うなッ!」

「短気だなぁ」

「うっさいわ!!…そんなことより総司」


突然真剣な目つきをする楓に沖田は笑うのを止める。

「局長と副長に言っといてや。
お絹の話だと、四条堀川周辺の宿に最近、余所者の浪人が大勢入ってきたらしい」


「そうですか。そんな大事なことなら自分で言ったらどうです?私忘れっぽいですし」

「アホ!うちは土方が嫌いなんや。ついでに山南副長もな」

芹沢暗殺の件以来、楓は山南をほとんど見かけていない。お互い忙しいのも理由の一つだが、楓が意識的に避けている部分もあった。


「山南さんもですか…」

「ああ」

「近藤さんは?」

「従うだけや。食料と寝床を与えてくれるのには感謝しとる」

「永倉さんは?」

「組長」





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