幕末異聞
弐拾一章:浅野 薫の記録



――文久三年 十二月二十二日

六番隊隊士が先斗町で斬られたとの事。下手人は不明。監察方が情報収集に取り掛かる。

私事では、隊内に些細な変化あり。同隊隊士・赤城楓の稽古の荒さ故、隊内外を問わず怪我人続出。沖田先生に負けず劣らずの荒さに隊士一同困り果てる。

――文久三年 十二月二十五日

またも隊士が斬られる。
今回は土方副長自ら検分に出向く。また長州の者であろうか。
監察方の島田氏に疲労の色あり。どうやら情報が集まらない様子。

私事では、赤城楓との稽古の際、左腕を竹刀で打たれ赤く腫れる。しばらくは痛みが残りそうだ。しかし、ここ数日の赤城の荒れようは尋常ではない。以前より一段と近寄り難くなっている。何かあったのだろうか。

――文久三年 十二月二十七日

長州藩士による芹沢筆頭局長の暗殺から早三ヶ月。
ようやく熱も醒めてきた頃だが、芹沢を誰よりも慕っていた副長助勤・野口健司が後を追うように切腹した。切腹についての詳細は不明。
これで水戸派は完全に壊滅。
新撰組はいよいよ近藤派の手中に納まるだろう。

――文久三年 十二月三十日

野口の遺体はどこかの寺で埋葬されたとの事。
詳細不明。二つの事件の下手人は未だ捕縛できず。近藤局長の顔は日に日に険しくなるばかり。

私事では、左腕の腫れが退いたため、稽古を再開することができた。


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