幕末異聞
「ここ…だな」
深夜の寝静まった店が立ち並ぶ大通りを右に曲がり、小道に入ってゆく。
息を潜め物陰から臭いのする方向へと視線を向ける。
「……なっ!!」
男が見たのは、赤い着物、肌は透き通るような白、髪は下ろしたまま無造作に風になびいている。
女だ。
しかし普通の女と違う。
左腕には華奢な体に似合わない大刀。
そして足元には十体ほどの死体が無残に転がっている。
女は声に気づきこちらを振り返った。
「誰や?」
「!!」