幕末異聞
弐拾四章:冬の終わり
――ぶえっくしゅんっ!!
「はぁ〜。江戸に比べてこっちはまだ寒いのぉ。鼻汁が凍ってしまいそうじゃ!!あっはっは!!」
東海道を京都方面に歩く一人の人物。
藁で編まれた編み笠を被り、雪道の中下駄を履いている。見た目からして常人とは少しずれている。
「そんなことより、ここは一体どこじゃ?!宿屋のばんばがこっち言うちょったきに従ったんに…この雪じゃどこ歩いてるのかさっぱりじゃ!!」
大声で文句を言いながらとりあえず自分が前だと思っている方向にひたすら歩く。
「困ったときゃあとりあえず前に進んでみるのが一番ぜよ!!
いざ行かん京都〜!!!わはははッ!」
この人物、変わっているのは外見だけではない。
驚くべき事に、今までの言葉は全て独り言だったのだ。
果たしてこの人物は孤独の中、京都にたどり着けるのだろうか?