幕末異聞
八章:疑惑
「近藤さん、どう思う?」
土方は沖田と楓が出て行った襖をじっと見たまま近藤に意見を求めた。
「どう思う…とは?」
「赤城の事だよ」
(この話の流れからなんの話をしようとしているかくらい解りそうなもんだが…。まぁ、この鈍さも近藤さんらしい)
旧友がいつまでも変わらないことに土方は少し嬉しくなった。
「なんだ歳?楓君のことが気に入らんのか?」
「別にそうは言ってねぇさ。ただクサいんだよ」
「…まさか!相手は子どもだぞ?」
「じゃあ聞くが、何故ガキで女のあいつがあそこまで強いんだ?」
「それは…」
「それに、さっきあいつが脇に置いていた刀。ありゃ大太刀だ。
あんなもん普通の斬り合いに使う奴はいねぇ。あんな重くて力が必要な刀を使うってんなら、相当の修行積んできてるはずだ。
増してや女。並みの稽古じゃ持つこともできねえだろうよ」
普通の刀の刀身は六十センチ前後。
一方、大太刀は刀身が九十センチ以上ある。
人間同士の戦において大太刀は動きが大きく、重いことから使用されることはまずない。
そんな刀を女で小柄の楓が持っているのだ。
「う〜む…。しかし歳よ。そんなに片っ端から人を疑うのはよくないだろう?」