幕末異聞
楓と初めて会ったのは二週間ほど前。
芹沢はんの頼みで離れまで案内したのが始まり。
実を言うと、芹沢はんがうち以外の女を離れに招き入れるなんて初めてのことだったから少し嫉妬していた。
なのに今は自分から会いに来ている。
人間とは本当に不思議だ。
芹沢に新調してもらった着物だったが、楓と話すために直接石段に座る。
(別に芹沢はんよりこの子がええってわけではあらへんよ?)
なぜか芹沢に後ろめたい気持ちになり心の中で弁解する。
「ええんか?それ新しい着物やろ?」
「ええんよ。うちは楓はんと話がしたいんどす」
「そんな言葉芹沢局長に聞かれたらうち斬られるな」
彼女なりに気を遣ってくれたであろう言葉が無性に嬉しい。
今日も空は秋晴れ。
子どもたちが境内で遊んでいるようだ。
「花いちもんめか…。懐かしいわぁ」
姿は見えないが子どもの声で花いちもんめを唄う声が聞こえてくる。
「せやな。っつか、あんたやったことあるんか?!」
「失礼な子やね!うちかて子どもの時くらいあったんやぇ?
楓はんかてこんな遊びより喧嘩に明け暮れてたんと違います?!」
「なんつーこと言…」