幕末異聞
「楓はん?」
楓の動きが止まった。
何かに集中しているようだ。
楓に習ってじっと静止してみる。
「どないしはったん?」
楓の顔を覗き込む。
どうも子どもたちの遊んでいるであろう方向を気にしている。
「……総司?」
楓は石段から飛び起き、声のする方向へ歩いていく。
とりあえずついていくことにした。
本堂のある方角に少し歩くと、石畳の上で遊んでいる子どもたちの姿が見えた。
「総司!!何しとるん?」
楓が子どもたちの輪の中に呼びかける。
すると、輪の真ん中から髪を軽く結った着流し姿の大人が現れた。
「ああ!!楓じゃないですか!」
見るからに優しそうな表情。
だが、その反面笑顔が張り付いてしまったという印象を受ける。
胡散臭い…。
「子どもに遊んでもらっとるんか?」
「まぁそうとも言いますね。
非番の日にはこうして子どもたちと遊んでいるんです!息抜きになっていいですよ。
楓こそ、そんな綺麗な女性連れてどうしたんです?
ついに男として生きる決心をしたんですか?!」
「…頭カチ割ったろか?」
「冗談ですよ〜!本当に気の短い人だなぁ。
それで?この方は誰なんです?」
どうやら楓はこの青年とは友人らしい。
青年はうちの目を大きな目でじっと見ている。