幕末異聞
「そうですか。残念だなぁ…。
では、私も失礼しますね」
沖田は眉を八の字にして残念そうな表情を浮かべて立ち去っていく。
(あ〜あ。結局今日は楓はんと話せなかったわぁ…)
暇つぶしがいなくなってしまい少し寂しかった。
「あ、お梅さん!!!」
俯いてた顔を上げると、少し距離を置いた場所から沖田がうちに声をかけた。
「芹沢局長は明日からまた二週間くらい大阪に行くそうなので、屯所にはいませんよ!」
「わかりましたぁ!おおきに〜!!」
それを聞くと沖田は本堂の方へ駆けていって姿が見えなくなった。
(そんな話、聞いてないわ…)
確かに今日から先、芹沢はんと会う約束はしていない。
「一言ぐらい言ってってくれてもええやん…」
無性に芹沢はんに会いたくなった。
自分でも何故だかは解らない。