幕末異聞
――ガサガサ……
楓が言い終わると同時に、庭の木の上から黒ずくめの男が降りてきた。
「うるさい女やなぁ…」
男は黒い目出しの頭巾を被っており、月明かりで目だけが光っているように見える。
「あんた、名前は?」
「山崎」
暗闇と同化している男の容姿は楓の位置からは確認できない。
「山崎君ね。うちのこと監視するのは結構やけど、残念ながらあんたを楽しませるようなネタは持っとらん。ただの時間の無駄やで?」
「……お前は何者や?」