盃に浮かぶは酒月
果たしてそれほどまでの覚悟が貴方におありでしょうか。
姫は口に出さず思った。
桂撫は、差し出された妙薬を見つめ…
躊躇いなく受け取った。
「約束しよう。千年後、貴女が戻って来るまでに、私はこの世の穢れを消し去ってみせる。」
―――再び生きて貴女に逢えると思えば、永遠の命も恐ろしくはない。
桂撫はその場で袋を開け、妙薬を全て飲み干した。
金色の粉が桂撫の喉を通り、やがて胃の中へ収まる。
痛みは無く、不思議と心地好い気分に浸った。
姫はそんな桂撫を不思議そうに、どこか哀れそうに見つめる。
「貴方様はなんて一途なお方。
わたくしのためにそこまでするなんて…。
永遠の命など、苦しむことばかりでしょうに。
人とは本当に判らぬ者。」