盃に浮かぶは酒月
やがて心を病んでいった桂撫は、頭の片隅でただひたすら…“この世の穢れを払う方法”を考えていた。
考え、考え、考え抜いて、ついに、
“あだなす者を皆殺し、自分が再びこの世の王になれば良い”のだと気付いた。
自分は不死。
この身は一つでも、幾千の軍勢と戦うには充分な武器だ。
桂撫は、自分に抗う人間は生かしておく必要はないと考えた。
“同じ人間”を迫害するなど、正に穢れの権化。
だから殺していい。
必要無い人間を殺せば、盗みも殺しも迫害も減る。
自分が王になれば、逆らう人間はいなくなろう。
この世は美しさを取り戻すに違いない。
―――そうすれば、姫は自分を見てくれる筈…。
……桂撫の狂った結論が、彼の名誉欲によるものだったなら良かった。
しかし違う。
桂撫はあくまで純粋に、“姫への想い”で行動していた。
かくして、約束の日から千年。
数多の屍を築き上げ、桂撫は念願叶い、この国を統べる王になった―――。