盃に浮かぶは酒月


桂撫の目から、透明な雫が一粒、二粒。


「…まあ、何故泣いておられるのです?わたくしに逢えて、嬉しくはないのですか?」


―――嬉しくない訳がない…。


声が嗚咽に押し止められた。
が、姫には桂撫の眼差しだけで気持ちが通じたらしい。


やんわり微笑んで、桂撫を優しく抱きしめる。
伽羅の香りが一層強まった。


「……赤映……、私は…、」


嗚咽を無理矢理堪えながら、桂撫は赤映の体を強く抱きしめた。

何を伝えたいかなど、分かりきっている。

赤映は黙って聞いていた。




「………私は、貴女を…愛し、ている…よ。

この千年、私はずっと…貴女に、相応しい男になると……!」


「存じております。努力なされたのですね。」


「…ああ……!!」


ああ、そうだ。その通りだ。
全ては貴女のために。
貴女に好いてもらうために。
貴女が好きだから。
貴女が愛しいから。

貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が貴女が……――――。


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