盃に浮かぶは酒月


「努力して、努力して、やっと…王になられたのですね、帝…。

……そのために沢山の人々を殺めましたね。

戦を仕掛けてきた武将どころか…、敵国に住まう罪無き女子供まで…。」


桂撫の脳裏に、何十年か前に殺めた百姓達の顔が浮かぶ。

仕方なかった。
彼らは私を恐れたから。
私を化け物と呼んだから。
生かしておく必要などない筈だ。


「貴族を殺め、その衣類や宝刀を奪いましたね…。」


仕方なかったのだ。
貴族は民の敵だから。
高価な身なりも持ち物も、民に鞭打ち得たものに違いない。
殺しても良い。


「………ご自身の親族まで、皆殺しにされましたね…。」


あんな奴らが親族なものか。
頭に蛆の湧いた淫蕩共が。
挙げ句私から皇位を奪った。
生かしておく意味がどこにある?


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