盃に浮かぶは酒月


「私は正しいことをした。
この世の穢れは全て殺した。全て始末した。

だから私はここにいる。
こうして貴女と向き合い話している。


私は貴女のために正しいことだけをし続けた…。
そうだろう…?」


―――私は貴女に相応しいと、言ってくれ……。



懇願するような桂撫の眼差し。

一瞬だけ、赤映は苦しげな表情をしたが、すぐに冷たい目を現す。


「…やはり千年の時の中で、貴方様は気が狂ってしまわれた…。

わたくしのため、わたくしのためと…、この世を変えるにはそれだけの感情では足りないでしょうに…。


ご覧なさい。
今の貴方様に、この世は本当に美しく見えますか?」


赤映姫の白魚のような指先が、眼下に広がるこの世の“現在の姿”を示した。


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