盃に浮かぶは酒月
赤映と桂撫の体を、あの淡い金色の光が包み始めた。
それは背後の満月と同等に美しく儚く輝き、桂撫の汚れた身を撫でていく。
まるで彼の穢れを拭うように。
「…なんだ…?とても、優しい光だ…。」
桂撫がそっと顔を上げる。
月を背にした美しい女(ひと)が、自分の頬を撫でる。
金色の光と同じくらい、優しい温かな手で。
「……あぁ…、私はもう、いいのだな…。」
―――やっと、貴女の手で…。貴女の腕の中で…。
桂撫は幸せそうに微笑んだ。
光は桂撫の穢れを吸い取っていく。
桂撫の体から、溜まりに溜まった穢れを取り除いたら、一体何が残るのか。
彼の白く若々しい体には最早、不老不死の妙薬の力は残されておらず、…千年分の穢れによって構成された、紛い物。
つまりそれは、人間でもなければ、赤映達天人に近しい存在であるわけでもない。
今や彼は化け物だった。