盃に浮かぶは酒月
―――ア
―――イ
―――シ
―――テ
―――イ
―――ル
言葉にはならなかった。
金砂になった唇も動かなかった。
ただ瞳だけが物語った。
しかし彼の瞳を見据えていた赤映には、全てが伝わっているようだった。
「………わたくしも同じ気持ちです。
…桂撫様……。」
桂撫は目を見開いた。
姫が初めて、自分の名を呼んでくれたのだ。
その音がひどく心地好く、ひどく愛おしく、桂撫は見開いた目を…幸せそうに細めた。
それを最期に、桂撫の体は、すっかり金砂に変わってしまった。