盃に浮かぶは酒月


―――月の都まで私がお送り致しましょう、赤映。


そう聞こえたのは空耳か。

…空耳でもいい。


「では、お言葉に甘えましょう。…ねえ、桂撫様。」


月明かりが反射し、赤映ともう一人…若く美しい桂撫の影を映し出す。

下弦に傾きつつある月の前で、二人の影はまるで抱き合っているように見えた。



やがて影は高く高く昇り、どこまでも昇り―――、



月の光の中に消えていった。






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