カラー オブ ヘヴン
元々この雑貨店を切り盛りしていたのは、あたしの父だった。
母親はあたしが物心ついた時には既に居なかったし、父が死んだ当時十一歳だったあたしが雑貨店の営業を続けていけるはずもなく、それからしばらくは、万引きや置き引きをしてやっと生活していた。
そんな生活が続いて四年たったある日、シャオファが初めて店に出て客をとったと聞いた時に、あたしは気づいたのである。
あたしも女であることに。
そしてそれが、生きていくための道具になるということに。
ただ、ロンシャンタウンで風俗商売を行うにはいくつかの決まりがある。
きちんとした営業のできる家屋がなければならないこと、龍上会に届け出を出さなければならないこと、それから営業売り上げの60%を場所代として龍上会に納めなければならないこと。
この条件を満たしていない所謂‘違法風俗営業’には、手厳しい罰が与えられる。
それは即ち、死をもって償え、ということ。
ついこの間も、無許可無店舗で違法営業を行っていた女が一人、壁の向こうに放り投げられたらしい。
幸いにも、あたしは第一条件をすでにクリアしていたし、万引きなどで見つかっていつ殺されてもおかしくないような危ない綱は渡りたくなかった。