カラー オブ ヘヴン


何故父がそんな事を言ったのか、今となってはもう分からない。

その真相にも、今はもうあまり興味がなくなってしまった。

今でも壁には龍上会の抜け目ない監視が光っているし、この街から脱出できるような気配は微塵もないのだから。


しかし、こうして部屋を眺めていると、父との思い出が蘇ってくる。

それが嫌で七年間この部屋に立ち入らなかったのだけれど、やはり思い出は色あせずに鮮明に思い出された。



父が仕事に使っていた机。



考え事をする時に決まって座っていたソファ。



よく一緒に眠ったベッドは、こんなに小さかっただろうか。



埃にまみれた部屋が、かつての色を帯びて記憶を鮮やかに蘇らせる。



思いを馳せながら、ふと本棚へと視線を移すと、その片隅にもう使われなくなって久しい型落ちしたノートパソコンが目に入った。

父が店の収支を記していたものだ。

恐らくはこの家で一番高価なシロモノだろう。
しがない雑貨店を経営するだけの家に何故こんな物があったのかは知らないけれど、幼いあたしには良い玩具だった。


この中にも、何か父の思い出が残されているかも知れない。


そう思ったあたしは、ガタ、と棚からPCを取り出して、机上の埃を気持ばかりぬぐってからそこにPCを置いた。

アダプターのコンセントを差し込んで電源を入れると、ヴン、と電気が伝わる音。

「まだ使えるんだ……」

埃でダメになっているだろうと思ったが、どうやらまだ使えるらしい。
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