カラー オブ ヘヴン
十五の夏。
開店前夜、店出しの準備をしていたあたしは、急に怖くなって身体をガタガタと震わせていた。
そこに、店の最終チェックにやってきたのがトウジだった。
震えるあたしに、トウジはどうした、と言ってその身を屈めてあたしと目の高さを合わせた。
こわい
おとこなんてしらない
泣きそうな声であたしが言うと、トウジはふ、と優しい表情を作った。
男なんて、大したモンじゃねぇんだ
怖い事なんて何もねぇ
言いながら、頭を撫で、唇を重ねた。
大きな手が、あたしの身体を行き来する。
はじめての痛みも、あまり無かった。
今になって思えば、トウジはかなり優しくあたしに触れていたのだと思う。
客は皆、トウジほど優しくあたしを抱かない。
だけどもあれは、きっと彼の仕事の一貫だったのだろう。
客の取れない娼婦なんて、使い物にならないのだから。
「会いたくなって、会いに来たんだ」
言いながら、あたしの背後に回り込んで後ろからあたしを抱きすくめる。
トウジは場所代を受け取りに来る以外では、大抵こうしてあたしを抱く。