カラー オブ ヘヴン


十五の夏。

開店前夜、店出しの準備をしていたあたしは、急に怖くなって身体をガタガタと震わせていた。

そこに、店の最終チェックにやってきたのがトウジだった。

震えるあたしに、トウジはどうした、と言ってその身を屈めてあたしと目の高さを合わせた。



こわい

おとこなんてしらない



泣きそうな声であたしが言うと、トウジはふ、と優しい表情を作った。



男なんて、大したモンじゃねぇんだ

怖い事なんて何もねぇ



言いながら、頭を撫で、唇を重ねた。


大きな手が、あたしの身体を行き来する。


はじめての痛みも、あまり無かった。



今になって思えば、トウジはかなり優しくあたしに触れていたのだと思う。

客は皆、トウジほど優しくあたしを抱かない。

だけどもあれは、きっと彼の仕事の一貫だったのだろう。


客の取れない娼婦なんて、使い物にならないのだから。


「会いたくなって、会いに来たんだ」

言いながら、あたしの背後に回り込んで後ろからあたしを抱きすくめる。

トウジは場所代を受け取りに来る以外では、大抵こうしてあたしを抱く。


< 15 / 72 >

この作品をシェア

pagetop