カラー オブ ヘヴン


パソコンの形をしたもの、eのマークを模したもの、電卓のような絵が描かれたアイコンは、店の収支を記録していたものだろうか。

上から順番にカーソルでなぞって行くと、一番下にトランプのアイコンが配置されていた。


これは、あたしがよく遊んでいたカードゲームのものだ。

夢中になっては、父にもう止めなさいと怒られた記憶がある。

父がPCを使いたい時に限って、あたしがこれで遊んでいたのも原因の一つだったように思うが、目が悪くなる、とか小言を言う父が今となっては懐かしい。

あの時の父はちょっと怖かったな、なんて思い出しながら、あたしは自然と小さく笑んでいた。


こんな些細な思い出でも、こんなに懐かしい気持ちが湧きあがってくるものなのか。


妙な感覚に陥ったまま、暫くぼーっと画面を眺めていると、画面の右下にゴミ箱の形をしたアイコンがぽつんと置かれていることに気づいた。

「何のアイコンだろう」

一見して、必要の無くなったデータをデリートする為のものだろうと言う事は明らかだったが、あたしは何気なくそのアイコンを叩いていた。


「なに、これ」

現れた画面には、一件だけ、父が居なくなった前日、つまり最後に家を出て行ったあの日の日付が名打たれたデータが残されていた。



< 35 / 72 >

この作品をシェア

pagetop