カラー オブ ヘヴン
「ゴミが住まう街、か。いい例えだな」
言って空の瓶を傍らにゴロン、と転がす。
「この国で肩身の狭い思いをしている連中は、みぃんなロンシャンが夢の街だと信じて疑わねぇ。最近、増えたんだ。どこで作ったか知らない大金持ってきて、あの街への入り方を聞きに来る奴が。あの街の本来の姿も知らねぇってのに。……あの街は、龍トウキチが作り出した幻想の街だよ」
いつになく饒舌に話すハンチングの男に、ディンはポケットから吸い差しの煙草の箱を取り出して男の横に投げ落した。
「おっさん。俺が今聞きてぇのはそんな話じゃねぇんだ」
キシシ、と癖のある笑いをもらして、ハンチングの男は煙草をくわえながらマッチで火を付ける。
ジュ、という音と共にゆっくりと紫煙をくゆらせると、声色を少しだけ低くして話し始めた。
「例の奇病が以前よりも感染力を増しているらしい。龍が動き出す日も近い。こっちのワ系の過激派も、そろそろ臨界点に差しかかってる。このまま手を打たないと、この国は……」
「内乱になるって訳か」
「そんな可愛いモンじゃないと思うがね」
ふう、と心地良さそうに煙を吐き出して、ハンチングの男は一層声色を低くした。
「……全面戦争、だよ」