カラー オブ ヘヴン
カオルちゃんやスティーヴに興味本意ではとても聞けなかった話を、この行きずりの男になら聞いても構わないんじゃないか。
そんな自分本位な好奇心が湧き出てくる。
「どうやってここに?龍上会の監視は?」
「情報屋に大枚はたいて聞き出したのよ。ま、詳しくは言えねぇけどな」
煙草に火を付けながらさらりと言う男だが、雨で湿った煙草に火がつかないのをみると、ちっ、と小さく舌打ちをして傍らに置かれた灰皿に投げ捨てる。
「何だ。ネーチャン、外へ出たいってのか?」
気の短そうな様子を垣間見て、あまり余計な詮索はしない方が良いかと若干身を引いたあたしに、男は意外にも自ら話題を振って来た。
「まあ……どんな所かなって」
男に問われ、あたしはそう言いながらふと考えた。
今まで、あの教会のある丘から見える外の世界が、一体どんな所なのだろうと思うことはあった。
幼い頃には、この街から出たいなんて考えていた事もあったけれど、父が死んでからはそんな事は思わなくなったし、決して行くことの叶わない外の世界への興味だけがあるのだと思っていた。
でも、だ。
もし、この街から出られるとしたら?
外の世界が一体どんな所なのかはよく知らないが、父の『真実』という亡霊から逃げ出すには十分なんじゃないのか。