カラー オブ ヘヴン


そんな逃げ道ばかり考えていると、ふいに男が顔を歪めて口を開いた。

「外はひでぇ有様だよ。相変わらずワ系は立場弱ぇし、トウ系はのさばってるしな」

そう言った男は、多分ワ系なのだろう。
苦虫を噛み潰したような表情を見れば、言われなくても感じ取れる。

「でもまぁ、それも時間の問題だ」

「どういうこと?」

含みを持たせて言う男に、あたしは思わずそう聞き返した。
男はふっ、と小さく息を漏らすと、あたしの太ももに手を置いてのしかかりながら話を続ける。

「ワ系の過激派が、事を起こすって話だからな。そうなったら、またこの国は前みてぇに戻っちまうだろうよ」

言いながら、男は太ももに置いた手をゆっくりと上下に動かし始めた。

「ま、見た所あんたはこの街から出たこたぁなさそうだし、これからもココにいりゃあそんな戦争には参加しなくて済むだろうよ」

あたしの首筋に顔を近づけ、吐息交じりに言う男。

外は、一体どういう事態になっているのだろうか。
過激派が事を起こす、そして国が前のようになる。

以前、この国がどんなにひどい状態だったのかは、父からなんとなく話を聞いたことがある。
父も年齢から言って実際に体験した訳ではないだろうが、聞いた限りの印象では『混沌』という言葉に尽きる状態だったようだ。


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