カラー オブ ヘヴン
そうしてまた葉巻の煙を吸い上げ。
「ごふっ……ぐっ、あ゛っ!?」
気持ち良さそうに吐き出した次の瞬間、急に苦しそうに胸を抑え始めた。
「先生!どうされました!?」
初めは煙で咽ただけかと気に留めなかった秘書だったが、咽るにしては異様な苦しみ具合に、顔色を変えて後部座席に身を乗り出した。
「止めてくれ!」
秘書に言われ、運転手が急ブレーキをかけて車を止める。
車が止まるか止まらないかのうちに、男は自分でドアを押し開けて道路へと転がり落ちた。
「先生!先生!?」
秘書が駆け寄るが、男は苦しそうに身を丸めながら咳き込んでいる。
「がっ、ぐっ、ふっ……」
そうして、胸の辺りを抑えて身を揺らし始めた。
一体、何が起こったのか。
先生に持病などあっただろうか。
いや、持病と言えば歳からくる腰痛くらいで、他は健康そのものだったはずなのだが。
秘書はパニックになりながら、スーツの内ポケットからやっとの思いで携帯電話を取り出し、病院に電話をかけ始めた。
「あ、あ、わ、私だ!そう!宋(ソン)先生の……!」
病院の専用回線に繋いでいるらしく、手短に会話が進んで行く。