カラー オブ ヘヴン
Resistance
国家省庁が立ち並ぶ区域を、仮に『国の中心部』と称するならば、その場所は『国の南部』と呼ぶのが正しいだろう。
寂れた町並みはロンシャンタウンと大差は無く、その差異を強いて言えば、警察による夜間巡回などで犯罪が概ね取り締まられているという点くらいだろうか。
やたらと小奇麗な警察署を除けば、あばら家と言っても過言ではない作りの建物が立ち並んでいる。
その町の、入り組んだ路地のさらに奥、灯りすら灯っていない粗末な平屋建ての家屋の前で、男が一人、辺りを用心深く見回していた。
しばらくあちこちに目をやり、人の気配が無い事を確かめると、後ろ手に扉を開け、さっと中に入っていく。
さほど広くも無い室内は、これと言って物も無く、随分長い間放置されている空家のようだった。
灯りが無いとまともに歩けぬほどの闇に包まれた室内を、男は無言のまま、何かにぶつかる事も無く進んで行く。
そして台所と思われる一角まで辿りつくと、その室内の端でしゃがみこみ、拳で床を三回、独特のリズムで叩いた。
男が床を叩くと、ガコ、という音と共に、地下への階段が現れる。
階段は薄明かりで照らされており、男は再度辺りを確認してから階段を降り始めた。