カラー オブ ヘヴン
「悪い。遅くなった」
階段を降りた先には、随分と広い空間が広がっていた。
大人であれば20人程は優に収容できるほどの広さがある。
ただのシェルターという訳でもなく、壁はきちんと板で補強され、中央には大型の机が配置されている。
床には、安物ではあるが絨毯も敷かれていた。
蝋燭の灯りがあちこちに灯され、隠れ家という言葉がうってつけの空間であった。
「来たな、文吾(ブンゴ)。どうした、何かあったか」
十数人の男女が机を囲む中、文吾と呼ばれる男に声を掛けたのは、その中心に立つ男だった。
「途中で警官に呼び止められた」
「マジかよ。そろそろココも変え時かぁ?割と気に入ってたんだけどな」
「いや、町で変な病が起こっていないかと聞かれただけだ。あの様子では、俺がここの一員だということも気付いていないだろう」
「……変な病って?」
文吾の言葉に、壁に寄り掛かっていた女が静かに問いかけた。
短い髪を金に染め上げた、長身で端正な顔立ちの女は、眉間に皺を寄せ訝しげな表情を浮かべている。
「……宋軍了(ソンジュンリャオ)が、奇病で死んだらしい。」
「なっ……!?」
「詳しくは聞き出せなかったが、どうやら新種の病らしい。つい先日の話だそうだ」