蝶々遊び
プロローグ


「麻朝ちゃん、具合はどう?」
「今朝よりだいぶ楽です・・・」
「そう、良かったわ。」

毎日の会話の大半を占める言葉。「具合はどう?」
私、六条麻朝は、生まれつき心臓が弱く、体も決して強い方じゃない。
幼い頃から学校には行かせて貰えず、父の経営するこの大きな病院で、毎日治療をしている。
だから私には友達もいないし、家族意外と話したことも無い。
ずっと点滴をしているわけじゃないから、少しくらいは外に出れるけど、動き回れるのは病院の敷地内だけ。

「・・・・・・つまんない。」

口癖だった。昔から。

「・・・外、行こうかな・・・」

毎日、おきてからしばらくの間点滴をし、その後は病院の中庭などを散歩する。
体調が良くない時はずっと寝てなきゃいけない。

「お母さん、少し外に出てきます。」
「一人で大丈夫?誰かついていった方が・・・」
「大丈夫です。今日は調子がいいので。」
「そう?じゃあ気をつけてね。具合が悪くなったらすぐに戻ってくるのよ。」
「はい」






「天気がいいなぁ・・・」

声に出して言ってみても、答えてくれる人なんていないけど・・・。

「(今日も・・・たくさんいるなぁ・・・)」

私の視線の先には、色とりどりのたくさんの蝶がいた。
この病院がある地域は、比較的都会だけれど、空気が綺麗で暖かい日が続くため、病院の中庭には毎年長い期間蝶がいた。
種類もたくさんいて、季節によって見れる蝶も違うので、見れる時季は蝶を見ていた。

「ひとーつ・・・ふたーつ・・・」

そして私は今日も数える。

「みーっつ、よーっつ」

私の楽しみは、これだけ。
生きるための頼みの綱は、これだけ。
私が出来る事は、これだけ・・・

蝶々遊びだけ。
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