チャーリーズエンゼルパイ



「みんな!早く車に乗り込んで!」


ポケットから取り出した車のリモコンのロック解除ボタンを押しながら、そう叫ぶシチロー。


それと同時に四枚のドアが次々と開かれ、各々が車に乗り込んだ。


運転手は勿論シチロー、そして助手席にはかおり、後席にてぃーだ、ひろき、子豚という配置である。


「早く出して、シチロー!」


窓から教団施設の様子を窺いながら、てぃーだがシチローに発車を促す。


扉につっかえ棒をしておいたもののその効力は長くは続かず、窓や裏口を廻って出て来た先程より大勢の信者達が、大声を上げて施設の庭を走って来るのが見えた。


キーシリンダーに車のキーを差しながら、シチローが隣りのかおりに向かって呟いた。


「本当なら、君のお母さんもここに居なければならないんだけど……これが済んだら、また作戦を考えなくちゃな……」


和子に特殊メイクを施しておいたのが、せめてもの救いである。これだけの騒ぎがあっても、和子がかおりの母親である事はまだ教団の誰にも気付かれてはいないだろう。


「シチロー!アイツらが来たわよ!」


今度は子豚が運転席のヘッドレストを叩きながら、シチローを急かした。


「じゃあ、みんな!ちょっと飛ばすからしっかり捕まってて!」


表情を引き締めて、キーを握る手に力を込めて、シチローがその手を捻った!



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