チャーリーズエンゼルパイ
家族三人が寄り添い、再出発を確かめ合ったその瞬間。
ふいに、どこからか誰かがゆっくりと拍手をする音が聴こえてきた。
三人がその音のする方に目をやると、拍手をしていたのは、その場にいた信者達の中の、あるひとりの女性信者であった。
目には、うっすらと涙を浮かべ微笑んでいる。
そして、その拍手はまるで湖に広がる波紋のように、しだいに周りの信者達へと移っていった。
パチ パチ パチ
パチ パチ パチ
パチパチ パチパチ
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
まるで、素晴らしい演奏を終えた後のスタンディングオベーションのように、全ての信者達はこの家族の幸せな結末を心より祝福していた。
ともすれば、信者達は朝唐の事を、詐欺師やペテン師などと怒り罵倒しても不思議では無い。
しかし、実際は違っていた。
彼等はずっと知りたかったのだ。
何が『幸せ』なのかを。
自らの不幸な境遇に苛まれ、藁にもすがるような気持ちで宗教に傾倒し、そして、ずっと修行を続け神に祈り、それでも求められなかったその答えを、今この瞬間にこの三人の家族によって、ようやく悟らされたような気がした。
己の魂を救ってくれるのは、神でも教祖でも無い。
自分達が逃げ去り、あとにしてきたあの場所に確かに居た、自分を愛し、いつも気遣ってくれた、家族であり恋人であり、仲間達であったのだ。
.